【助産師執筆】常位胎盤早期剥離ってなに?

 皆さんは、「常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり)」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。

 頻度としてはそう多くはありませんが、 常位胎盤早期剥離は、「正常位置で子宮体部に付着している胎盤が、妊娠中または分娩経過中の胎児娩出前に、子宮壁より剥離するもの」と定義されています。

 常位胎盤早期剥離は、胎盤の子宮付着部の出血から始まり、形成された胎盤と子宮間の血腫が、隣接する胎盤をさらに剥離させることで、最終的に胎盤機能を障害させる状態をいいます。 常位胎盤早期剥離の頻度は、0.5~1%と言われています。

 1980~1997年の間での常位胎盤早期剥離と関連した母体死亡例の頻度は11.3%であったのに対し、2004~2008年では5.4%であり、かなり改善しています。

 一方、周産期死亡に占める常位胎盤早期剥離の頻度は12%で、産科医療補償制度再発防止に関する報告書によると、母体予後は改善されつつはありますが、常位胎盤早期剥離は母児双方の予後に重大な影響を与える疾患と言えます。

 発症時期は妊娠の週数の進行にしたがって増加し、特に妊娠32週以降に多く、妊娠39週にピークとなり約50%が妊娠37週未満に発症します。

 常位胎盤早期剥離の危険因子としては、

①常位胎盤早期剥離の既往 ②母体年齢、経産回数の増加 ③妊娠高血圧腎症 ④高血圧症 ⑤絨毛膜羊膜炎 ⑥妊娠37週未満の前期破水 ⑦多胎妊娠 ⑧羊水過多 ⑨喫煙 ⑩血栓形成傾向 等 が挙げられます。 その他、自動車事故や暴行などの外力が子宮に加わることによって常位胎盤早期剥離が起こる場合があります。これは、胎盤組織と子宮筋層が外力によりずれて起こるもので、傷害される血管が多ければ多いほど剥離面積も広がります。そのため、自動車事故等にあった場合は母体の外傷のみならず胎児の外傷とともに胎盤剥離の有無を超音波検査で確認してもらう必要があります。

 症状としては、胎盤の剥離面積と剥離する速さにより異なります。母体の主な症状は、性器出血、子宮圧痛または腰痛、頻回な子宮収縮、持続的な子宮収縮、切迫早産兆候などが挙げられます。一方、無症状の方もいます。

 胎児の症状としては、胎児への酸素や栄養の供給を担っている胎盤がはがれるので、胎児機能不全により重症脳性麻痺や子宮内死亡などがあります。胎動減少を主訴に受診し診断となることもあります。

 診断は、母体の症状に加えて胎児心拍陣痛モニタリング、超音波所見などを組み合わせることで総合的に行われます。 常位胎盤早期剥離と診断された場合、活動を制限するだけのこともありますが、出血が続く場合や胎児が危険な状態である場合、妊娠満期である場合はできるだけ早く分娩します。そのため、帝王切開の選択となることもあります。また、常位胎盤早期剥離では、多量の出血とともに、凝固機能異常が生じることもあり輸血や凝固因子の補充も行われます。

<まとめ>

・ 常位胎盤早期剥離の場合、自身で判断することはとても難しいです。性器出血や陣痛とは異なる腹部の激しい痛み、また自動車事故等の腹部に強い衝撃が生じた場合は、かかりつけ医に連絡し、診察してもらうことが大切になります。

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〈参考文献〉

妊娠期の正常と異常:藤井知行 . 中山書店 . 2020 .