【助産師執筆】妊娠貧血ってなに?

 妊娠して既に妊婦健診で貧血と言われた方、以前より疲れやすい、ふらつきがみられる方はいませんか?

 これまで、貧血と言われたことのない方でも、妊娠して初めて貧血と言われたり、貧血症状が出現したりする方もいらっしゃいます。ここでは、妊娠中の貧血についてお話ししたいと思います。

 妊娠中の循環血漿量は、妊娠32週頃で単胎の場合約1,000mLも増加し、これは非妊娠時の循環血漿量の40~45%に相当します。以降減少し、産褥約3週間で非妊娠時の状態に回復します。妊娠中は、赤血球・血色素も約30%増加しますが、相対的に血漿に希釈されるため、ヘモグロビン(Hb)、ヘマトクリット(Hct)は低下します。

 妊娠性貧血は、妊娠に起因する貧血で、Hb値11.0g/dl未満、および/またはHct値32.0%未満のものをいいます。貧血の症状としては、自覚のないものから、疲労や脱力、ふらつき、労作時の軽度の呼吸困難等があり、貧血が重度の場合は頻脈または低血圧を伴うこともあります。

 妊娠貧血は全妊娠の約20%に発症し、その大部分は、妊娠に起因する鉄欠乏性貧血、葉酸欠乏性貧血または両者の合併したものです。しかしながら、まれに再生不良性貧血や白血病などの偶発合併症のことがあり、慎重な鑑別も必要となります。

 妊娠初期・中期・後期では、Hb値、Hct値、白血球数などを調べます。

 成人女性の鉄保有量は約2,000mgで、その60~70%は赤血球に存在し、他は肝臓、脾臓、骨髄に貯蔵されています。妊娠すると、母体に蓄えていた鉄は胎児に優先的に運ばれます。そのため、胎児の鉄需要が増大し、貯蔵鉄も減少し、約1,000mgが必要となります。したがって、非妊娠時鉄保有量の50%をさらに摂取する必要があります。妊娠後期になると胎児の成長に必要なため、初期に比べ、妊娠中期~後期ではその2倍以上の鉄分が必要になると言われています。食物中の鉄の吸収率は平均10%程度であり、1日に約4.0mg余分に摂取する必要があります。妊娠年齢の日本女性の平均鉄摂取量が1日7.0mgであることを考えると妊婦は必然的に鉄欠乏に陥ることとなります。

 治療としては、鉄欠乏性貧血に対して経口的に鉄剤を摂取します。投与量の約10%が吸収されると考えられており、腸管の疾病や消化器症状などの副作用のために経口投与が難しい場合には、点滴投与を行うこととなります。

 普段からできる貧血予防として、鉄分をサプリメントから摂取してもよいですが、サプリメントのみに頼ると他の栄養素が不足する可能性があるため、食事からバランスよく摂るようにしましょう。「ヘム鉄」といわれる魚や赤身の肉などの動物性食品に含まれる鉄は、吸収率が高いです。「非ヘム鉄」といわれる野菜(特に緑黄色野菜)や穀類は、吸収率が低いですが、たんぱく質、ビタミンCを含む食品と組み合わせることで吸収率がUPするため、バランス良く摂取すると良いでしょう。

 食事から鉄分を摂取するには、鉄分の吸収率を上げることも大切で、レモン等の柑橘類や梅干等に含まれるクエン酸は、鉄分の吸収率を良くします。一方で、紅茶やコーヒー等に含まれるカフェインは、鉄の吸収率を下げるため、食後30分以上経過してから摂取するようにしましょう。

〈まとめ〉

・妊娠貧血は、全妊娠の20%に発症し、自覚症状のないものから、疲労や脱力、ふらつき、労作時の軽度の呼吸困難などの症状が出現する場合があります。また、貧血が重度の場合は、頻脈、低血圧を伴うこともあります。

・魚や赤みの肉、緑黄色野菜や穀類を、柑橘類に含まれるビタミンCや梅干しなどに含まれるクエン酸と共に摂取することで、鉄分の吸収率がUPするため、バランス良く食事を摂取することが大切です。

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〈参考文献〉プリンシプル 産科婦人科学:武谷雄二他,メジカルビュー社